大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)1087号 決定

〔主文〕1 申立人が、別紙目録(一)記載の土地上にある同目録(二)記載の建物を取り毀し、右土地上に同目録(三)記載の建物を建築することを許可する。

2 申立人は、相手方に対し、金三二万円を支払え。

3 別紙目録(一)記載の土地についての申立人相手方間の本件借地契約の賃料を本裁判確定の月の翌月分から一カ月三四二〇円(3.3平方米当り六〇円)に改める。

〔理由〕申立の要旨

1 申立人は、相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という。)を非堅固建物所有の目的で賃借中にして、同地上に同目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有している。

2 本件建物は老朽化し、腐蝕破損部分も生じ、狭隘でもあるので、これを別紙目録(三)記載の建物に改築したいが、相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によると、申立人の亡父山下寅松は、相手方の亡父小林信から昭和九年一月一日本件土地を非堅固建物所有の目的で期間を定めずに賃借し、申立人、相手方ともそれぞれ相続により賃借人、賃貸人の地位を承継したこと、申立人が本件土地上に本件建物を所有していること、賃料は昭和三五年五月一日以降月五七〇円であることが認められる。右のように期間を定めなかつたのであるから、存続期間は昭和三八年一二月三一日までであり、右期間満了の際賃貸人から更新拒絶をした資料もなく、また、合意更新した資料もないので、右期間満了とともに法定更新され、更新後の残存期間は昭和五八年一二月三一日までということになる。

相手方は、本件借地契約が昭和三九年一〇日頃合意解除されたと主張するが、相手方本人尋問の結果によるも、相手方は昭和三七、八年頃から申立人に本件土地の明渡を求めたが、その承諾を得られなかつた事実が認められるので合意解除の主張は採用しがたい。

また、相手方は、増改築許可の申立は、本件の如き新築の場合には許されず、仮りに許されるとしても、本件土地の客観的事情は変更していないのみならず、本件改築により建物の耐用年数は延長され、建物の朽滅による借地権の消滅により得べき相手方の利益が一方的に侵奪されることになるので、本件申立は、棄却さるべきであるという。借地法八条の二は、宅地が著しく少い現状の下において借地の合理的利用を図る趣旨で新設されたものであるので、本件の如き全面的改築を同条二項の増改築から除外すべき理由はなく、増改築許可の裁判は、建物の構造に関する借地条件の変更と異り、借地の客観的事情の変更を要件とするものではなく、本件改築により建物の耐用年数が延長され、ここに伴い相手方が不利益を受けても、それは法が予定しているところであり、さればこそ、増改築許可の裁判をなす場合には、当事者間の利益の衡平を図るため、財産上の給付その他の附随処分を命じうることとしているのであるから単に賃貸人が不利益を受けるということをもつてしては、本件申立を排斥する理由にならないので、相手方の右主張は、失当である。

右のように、申立人は、現に本件土地を建物所有の目的で賃借中であり、本件土地に建物所有しており、本件の資料によれば、本件改築は土地の通常の利用上相当であると認められ、増改築の制限に関する特約の存否は不明であるので、本件申立は、これを許可すべきである。

2 附随処分

本件改築により、本件借地権はその存続が強化されることになるので、借地人である申立人に財産上の給付を命ずのが相当である。本件の資料によると、本件建物は昭和二一年の建築にかかり、相当老朽化していることが認められるので、給付額は、右老朽化の事情のほか借地契約の経緯内容を考慮し、従来の裁判例に徴し、本件土地の更地価格(鑑定委員会の意見に従い3.3平方米当り一九万円と認定)の三%にあたる金三二万円(万円未満四捨五入)を相当とする。

なお、賃料を鑑定委員会の意見に従い一カ月三四二〇円(3.3平方米当り六〇円)に改める。

申立人は、鑑定委員会の更地価格および賃料の評価が高きに失するというが、右評価を覆す資料がないので、鑑定委員会の意見に従うほかない。相手方は、増改築許可の裁判は借地法七条の異議権を失わしめるものであり、従つて、本件の場合、借地権の存続期間は本件建物取毀後二〇年延長されることになるので、財産上の給付は右期間延長を考慮に入れるべきであるというが、増改築許可の裁判は、増改築の制限に関する特約の効力を土地の合理的利用の観点から一時的に排除するものであると解すべきであり、従つて、申立にかかる増改築に関するかぎり右特約のない場合と同様に扱うこととなるので、右特約がない場合に異議が述べられると同じく、増改築許可の裁判により、賃貸人は借地法七条の異議権を失わないというべきである。(小山俊彦)

目録

(一) 東京都大田区新蒲田三丁目五四番

宅地 596.36平方米(一八〇坪四合)の内 188.42平方米(五七坪)

(二) 東京都大田区新蒲田三丁目五四番地四

家屋番号五四番

木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅

床面積 23.14平方米(七坪)

現況

木造セメント瓦葺平家建居宅

床面積 42.97平方米(一三坪)

(三) 木造二階建居宅

床面積 一階 63.62平方米

二階 30.57平方米

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